【避けられない】鋳物にできる「巣」・・・問題が起こるまで見つけられない??

こんにちは。近江クリエイトです。

 

みなさんは鋳物にできる「巣」という物を知っていますか?

この鋳巣がバルブにおいてとても厄介なんです。
と言うのもメーカーはもちろんお客様にも影響を及ぼしてしまうんです。

 

しかし、この鋳巣はどうすることもできないのが現実です・・・。

ということで、今回はバルブに起こる鋳巣とその問題について解説していきます。
この記事を見ることでバルブの鋳巣についての理解を深めることができます。

是非最後まで見て参考にしてみてください。

目次

  1. 鋳物の「巣」とは?
  2. 鋳巣によって起こるバルブの問題
  3. ロストワックスは鋳巣が発生しにくい?
  4. まとめ

 

1.鋳物の「巣」とは?

鋳巣とは、鋳造品の内部や表面にできる空洞のことで、見た目や強度に悪影響を与えます。イメージとしては「トムとジェリー」などに登場するスイスチーズの様な物です。

 

鋳巣の原因は主に以下の3つに分けられます。

①ガス鋳巣:溶湯や鋳型から発生するガスが溶湯に巻き込まれて空洞を作るもの。
②引け巣:溶湯が凝固する際の収縮によって空洞ができるもの。
③巻き込み鋳巣:鋳型の破片や不純物が溶湯に混入して空洞を作るもの

 

「鋳巣」は避けられない?

 鋳物の「巣」を防ぐ方法は、主に以下のようなものがあります。

①鋳造条件の見直し:鋳造圧力や鋳造温度を適正化することで、ガスの発生を抑制。
②鋳型の改良:鋳型の焼成や湯道の設計によって、鋳型内の残渣や通気性を改善。
③湯道の工夫:鋳型の冷える順番や湯口の位置・大きさの工夫、鋳造機の回転数や注湯速度を調整。
④製品設計の見直し:鋳造品の肉厚や交差部を減らしたり、補強リブや鋳抜き穴を設けるなど。

 

以上のように、鋳物の「巣」を防ぐ方法は、鋳造条件や鋳型、湯道、形状などの管理や工夫が必要です。 鋳物の「巣」は鋳造品の品質に大きく影響するため、鋳造工程の各段階で注意深くチェックすることが重要です。

しかし、鋳巣を完全に発生させないことは、現実的には非常に困難です。
鋳造は、溶湯の温度や流れ、鋳型の形状や通気性、凝固の速度や方向など、多くの要因が影響する複雑なプロセスです。 これらの要因をすべて完璧に制御することは、技術的にも経済的にも不可能に近いと言えます。
したがって、鋳造にとっては鋳巣を完全に発生させないことを目指すのではなく、鋳巣の発生を最小限に抑えることが目指すべきことなんです。

鋳巣によって起こるバルブの問題は様々です。
例えば・・・

・バルブ本体に穴が空き耐圧リークが発生する。
・ハンドルやヨークが破損する。
・製作途中に発見され、作り直しをしなければなくなる。

 

バルブ本体に穴が空き耐圧リークが発生する

鋳巣が原因でバルブに穴(ピンホール)が発生することがあり耐圧リークに繋がってしまいます。このピンホールは製造時の製品検査では発見できず、実際現場で取り付けて繰り返し圧力が掛かることで、ある日栓が抜けたように現れることもあります。事前に発見するのが意外と難しい厄介な現象です。

特に鋳鉄(FC)、ダクタイル鋳鉄(FCD)は鋳造時にガスが発生しやすいのでこの現象が起こりやすくなります。

ハンドルやヨークが破損する

操作時に負荷のかかるハンドルやヨークが鋳巣によって破損する場合があります。
部品内部に鋳巣があると設計強度よりどうしても劣ってしまうので、このような事が起こるのです。

これも特に厄介で、ヨークやハンドルの製品検査では「外観検査」「作動検査」でしか確認をしません。
しかし、これらの部品の破損は繰り返し操作による発生が多いのです。
なので鋳巣は内部に起こっている場合もあるので、外観からは確認できずトラブル発生後に分かるというケースも多いのです。

こちらのようなCTスキャンなどを使った非破壊検査で事前に鋳巣を発見することはできます。
しかし、もちろん費用の掛かる事なので、基本的にはそこまでして鋳物状態のチェックをしていないのが現状です。

製作途中に発見され、作り直しをしなければなくなる

加工中や製品検査で発見される場合もあります。
製作中であれば、設置後ではないので直接現場自体に問題は起こらないのですが、その分作り直しを余儀なくされる場合が多いので、「納期」という面で影響がある場合があります。

 

以上の様に、鋳巣によって様々なバルブの問題が引き起こされます。
しかし、これも先述したように鋳巣を完全に発生させないことは、非常に困難なので仕方のない事なんです。

3.ロストワックスは鋳巣が発生しにくい?

参照:ハヤカワロストワックス「ロストワックス精密鋳造」

では、鋳巣によるバルブの問題を抑えることはできないのでしょうか?

実は、同じバルブ製造方法の中でも「ロストワックス」で作られたバルブは鋳巣が少ないのです。
ちなみにロストワックスとは、ロウを利用した鋳造方法のことです。
→製造方法について詳しくはこちらを参照ください

その理由は、ロストワックス鋳造の鋳型はセラミック粉を固めたもので、微細な穴が全面に空いているため、鋳型内のガスが逃げやすくなっているからです。

もちろん引け巣や巻き込み鋳巣の様に設計条件や環境によって発生する要因については対策が必要ですが、それでもロストワックスのような精密鋳造は鋳巣の問題を大きく解決することに繋がります。

 

ロストワックスを使ったバルブは??

ロストワックスで製作するバルブはステンレス製品となります。

仕切弁、逆止弁、玉形弁、バタフライ弁、ボール弁・・・
数多くの種類のバルブが作られています。

これらロストワックスで製作したバルブは鋳巣による問題は少なくなるので、「問題を起こしたくない」ラインのバルブ選定におススメします。

 

ちなみに以前、ステンレス材料について解説した記事もあるので是非!

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4.まとめ

今回は、バルブに起こる鋳巣とその問題について解説しました。

最後に今回の内容についておさらいです。

①鋳巣とは、鋳造品の内部や表面にできる空洞のことで、見た目や強度に悪影響を与える
鋳巣を完全に発生させないことは、現実的には非常に困難
③鋳巣によってバルブに様々な問題が起こる。
・バルブ本体に穴が空き耐圧リークが発生する。
・ハンドルやヨークが破損する。
・製作途中に発見され、作り直しをしなければなくなる。
④ロストワックスは鋳巣が起こりにくい
ステンレス製のバルブがおススメ

 

以上が今回のまとめとなります。
この記事を見ることで「鋳巣は仕方のないこと」をまず理解していただけると思います。
その上で、状況に応じてロストワックスで製作したステンレス製バルブを使用するなど、バルブ選定の参考になればと思います。

 

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