【基本】バルブの材料を学ぶ。万能!!最強!!ステンレス鋼【SCS13A・SUS304】

こんにちは。近江クリエイトです。

 

バルブの材質も種類が様々・・・

「どんな種類があるのか知りたい」
「それぞれの特徴を知りたい」

このような疑問にお答えします。

 

今回は万能!で最強!!の材質。ステンレス鋼【SCS13A・SUS304】について解説します。

この記事を見れば、ステンレス鋼【SCS13A・SUS304】の基本的な性質が分かります。
バルブ材料としてのSCS13A・SUS304のことを知りたいと思った方は、是非参考にしてみてください。

目次

  1. SCS13A・SUS304の基本特性
  2. ロストワックスで性能アップ!
  3. 要注意!「かじり(焼き付き)」
  4. SCS13A製バルブの主な用途
  5. まとめ

 

1.SCS13A・SUS304の基本特性

ステンレス鋼【SCS13A・SUS304】はバルブにおいてバルブ本体のみならず、ステムやヨーク等の部品にも広く使用される材質です。

ステンレスと言っても大きくは、SUS304やSUS316等のオーステナイト系とSUS403やSUS420J2等のマルテンサイト系に分かれます。

どちらもバルブにおいては、非常によく使う材質なので覚えておいて損はありません。
→ステンレスの違いについては、ステンレス協会のこちらの記事でも詳しく紹介されてますので参考にしてみてください。

ちなみにSCS13AとSUS304は持っている機械性質は同じです。
その違いは、次の通りです。

SCS13A・・・鋳造品
SUS304・・・棒材、板材

 

SCS13AはJIS規格ですが、ASTM材としてCF8もよく使われますので覚えておきましょう。

 

【ワンポイントプラス】
SCS13という「A」が付かない材料がありますが、SCS13Aに比べてマンガンの含有量が少し多く、強度が少し劣ってしまいます。
機械的性質は少し異なりますが、バルブの材質としては、ややこしく考えず、どちらも同じ材質だと覚えてください。

 

では、ここからはバルブ材料のSCS13Aとして特性を紹介します。

①強度

引張強度480N/mm2以上。
SCPH2と同じ数値で強度が強い。

②耐温度

最低温度は-198℃、最高温度は800℃まで。

③価格

非常に高価。

④加工のしやすさ

鉄鋼の中では、非常に加工しにくい(製造費用が高くなる)。

⑤耐食性

かなり高い。防錆処理をせずとも水に使用して問題ない。

 

以上をまとめると、強度、耐温度、耐食性等、機械的性質が非常に優れる材料なんです。
上述していませんが、薬品など、あらゆる流体にも適応しており非常に万能である点もポイントです。

一方で、材質自体も非常に高価で、また加工もしにくく製造的にもコストがかかるので、価格的デメリットはあります。

しかし、それを踏まえても機械的性質にも優れ、万能性のある材質であることからバルブ材料としては最強の材質と言えます。

2.ロストワックスで性能アップ!

ステンレス鋼は機械的性質に優れていることから「ロストワックス」という製法で鋳造されることが多くなって来ています。

ロストワックスとは、ロウを利用した鋳造方法のことです。
→製造方法について詳しくはこちら

このロストワックス技術はバルブへ多大な影響をもたらしました。

①複雑な形状の生成

これまでの鋳砂で固める製法だと崩れてしまう恐れがあるので、複雑な形状は難しかったのですが、このロストワックスならそれが可能となりました。

②生産性の向上

ロストワックスで出来た製品は、精度が高く仕上がる為、後加工の軽減や不良率の低下に繋がっています。

③製品の軽量化

精密に仕上がることから、よりコンパクトさや薄さを求めた軽量化を図った設計をすることができるようになっています。

 

鋳造技術の進歩により、高性能・高品質なバルブが製造されています。
言い換えるとステンレス製のバルブは高性能・高品質な物が多いです。

3.要注意!「かじり(焼き付き)」

ステンレス材において「かじり(焼き付き)」は要注意です。

「かじり(焼き付き)」とは
接触している 2つの金属が互いに融着して一体化する現象。主な原因は、金属の表面同士が擦れた際に発生する「摩擦熱」と言われる。
接触する2つの金属面の潤滑が不十分であれば、かじる可能性が高くなります。

 

特にバルブにおいては、シート材としてやステムとして等、摺動部の部品としてもステンレスが多く使われるのでこの「かじり」には要注意です。

実際に、僕の経験としても「かじり」が原因でバルブが動かなくなった不具合というのもあります。

その為、かじり防止の対策は必須です。

主な対策

  1. 潤滑油の使用
  2. 「ゆっくり」締め込む (バルブの開閉時間を遅くする)
  3. 接触する金属に硬度さをつける

 

4.SCS13A製バルブの主な用途

 

機械的性質に優れることからバルブ本体のみならず用途は非常に多岐に渡ります。

バルブ本体として

あらゆる流体に適応している為、水道用やプラント配管、粉体装置など広く使用されています。

またバルブの「長寿命化」の為に使用されることもあります。

例えば、水流体としてもこれまでは【FC】を使用していたが、「耐久年数を上げたい」ということでSCS13A製の物に変えたなんて事例もあります。

バルブの部品として

バルブ本体だけでなく「バルブの部品」としても幅広く使用されています。

例えば、このような部品です。

①ステム・・・バルブの操作軸
②ヨーク・・・バルブの操作機をセットする為の土台
③バルブのシート・・・流体の止水を保つ部品。

 

これらの多くは、鋳物ではなく板材や棒材のSUS304が使用されます。

実は、【FC】や【FCD】のバルブにも部品としてはSUS304がよく使われます。
言い換えると、本体は鉄でもアッセンブリなども含め、多くはSUS304でデコレーションされているんです。

 

5.まとめ

今回はステンレス鋼【SCS13A・SUS304】について解説してきました。

以上のことをまとめると、
SCS13A・SUS304は強度、耐温度、耐食性等の機械的性質にも優れ、またあらゆる流体にも適応しています。

エース級に優れているにもかかわらず万能なことから、すなわち最強の材質だと言えます。

一方で価格的には非常に高価であることは覚えておかなければなりません。
しかし、やはり良い物は「高い」んですよね

 

最後に個人的な意見ですが、ステンレス鋼のバルブが増えていく方が良いと考えます。
理由は、高価とはなりますが、あらゆる条件にも適し「長寿命化」にも繋がるからです。
これまでの経験でも【FC】や【FCD】を使ったバルブはどうしても老朽化しやすいのですが、ステンレス鋼のバルブは老朽化が遅く長持ちする傾向にあります。
「配管の老朽化」による事故を防ぐ事や流体の安定供給の観点からも、ステンレス鋼のバルブが増えていくべきではないかと思います。

 

以上がバルブ材料の【SCS13A・SUS304】について基本特性となりますので、是非覚えておいてください。

 

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