【基本】バルブの材料を学ぶ。高温、高圧の二刀流!!鋳鋼【SCPH2】

バルブの材質も種類が様々・・・
「どんな種類があるのか知りたい」
「それぞれの特徴を知りたい」
このような疑問にお答えします。

 

こんにちは。近江クリエイトです。

僕はこれまで10年間で100現場以上を経験してきました。
そんな僕が実務で使えるバルブの知識を分かりやすく紹介します。

今回は高温、高圧専用??鋳鋼【SCPH2】について解説します。

この記事を見れば、鋳鋼【SCPH2】の基本的な性質が分かります。
バルブ材料としてのSCPH2のことを知りたいと思った方は、是非参考にしてみてください。

目次

  1. SCPH2の基本特性
  2. FCDとの違いは?
  3. SCPH2製バルブの主な用途
  4. まとめ

 

1.SCPH2の基本特性

鋳鋼(以下SCPH2)は高温、高圧用のバルブ材料として多く使用される材質です。

JIS規格としてはSCPH2がよく使用されていますが、同じくらいにASTM材としてA216 WCBも使用されています。

【ワンポイントプラス】
厳密には、ASTM材のWCBの方が機械的強度は強いのですが、どちらの材質もバルブの規格としてはAPI規格を基準としているので、バルブ性能としては「同じ」となります。ややこしく考えず、どちらも同じ材質だと覚えてください。

 

材料を引張った際の最大強度は、480N/mm2です。

 

では、ここからはバルブ材料のSCPH2として特性を紹介します。

①強度

非常に強い。

②耐温度

最低温度は-10℃、最高温度は425℃まで。

SCPH2の最高温度は538℃と規格されていますが、450℃くらいから高温になると黒鉛化※して本体の割れに繋がっていくので、バルブの性能を維持できるのは425℃が上限となります。
※この現象については、こちらの記事で詳しく解説されています。

③価格

材料自体はそこまで高価ではない(FCDよりは高い)。

④加工のしやすさ

比較的加工しやすい。

⑤耐食性

低い。防錆処理が必要。

 

以上をまとめると、強度耐温度に非常に優れている為、高温・高圧に適した材料と言えます。その割に材料自体の価格は、そこまで高くもなく、加工もしやすいというのもメリットです(材質としては高価ではありませんが、バルブとして厳しい管理をする為、管理上、高価になる場合があります)。一方で、耐食性には欠けるので防錆処理が必要となります。

 

2.FCDとの違いは?

強度と耐温度に優れているという点では、【FCD】と非常に似ています。しかしこの2つには、はっきりとした「差」があります。

なぜならSCPH2は「鋼」FCDは「鉄」だからです。「鋼」と「鉄」では成分が違う為、機械的性質も異なってきます。

そこでその違いを以下にまとめてみました。

ちなみにFCDについてまとめた記事はこちらをご覧ください。
【基本】バルブの材料を学ぶ。ダクタイル鋳鉄【FCD】!FCの上位版?違いは?

 

①強度

FCD・・・強い
SCPH2・・・FCDよりさらに強い

 

FCDは引張強度400N/mm2や450N/mm2に対し、SCPH2は480N/mm2となることから、機械性質的にもSCPH2の方が強いと言えます。

【ワンポイントプラス】
バルブの圧力クラスを見てもFCDは20Kまでですが、SCPH2は最大40Kまであります。その一面からもSCPH2の方が強度が高いと言えるでしょう。

 

②耐温度

FCD・・・高い
SCPH2・・・FCDよりさらに高い

 

FCDは最高温度350℃までとなるのに対し、SCPH2は425℃となることから耐温度もSCPH2の方が高いと言えます。

 

③溶接性

FCD・・・劣る
SCPH2・・・優れている

 

FCDは炭素含有量が多い為、溶接施工が難しく、バルブ性能に影響しやすくなります。一方でSCPH2は炭素含有量が少ない為、溶接施工もしやすいのが特徴です。

【ワンポイントプラス】
一般的にFC・FCDのバルブ本体には溶接は行いませんが、SCPH2のバルブには行います。

 

以上がFCDとの大きな違いとなります。

要するに高温・高圧用としては、FCDより優れた「上位版」ということになります。
FCDでは対応できない場合、SCPH2で検討するという場合も非常に多いです。

 

3.SCPH2製バルブの主な用途

石油プラントや火力発電所等で使用されるケースが多いです。
中でも高温・高圧や可燃性に対して使用される為、非常に「安全性」が問われるケースが多いのも特徴です。

その為、SCPH2(WCB)を使ったバルブにはJISはじめAPI、JPI、ANSI(ASME)等規格も多く、厳しく管理をされています。

また他には、水力発電所でも使用されています。
ダムや水力発電の高い圧力を支える為、強度の高いSCPH2のバルブが使用されるということです。

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4.まとめ

今回は鋳鋼【SCPH2】について解説してきました。

最後に今回の内容についておさらいです。

FCDより強度、耐温度、溶接性に優れた高温・高圧に適した材質

耐食性には劣るので防錆処理が必要

以上がバルブ材料の【SCPH2】について基本特性となりますので、是非覚えておいてください。

 

その他にもバルブの材質に関して記事にしています。
よければそちらも参考にしてみてください。

☟バルブの材質に関する記事

 

 

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